2024年9月6日(金)天気:晴れ
前日のおはなし
アルペンルートをめぐる旅二日目、まだ日も出ない朝4時40分にホテルロビーに集合し、入り口となる立山駅に行くため電鉄富山駅へ。
天気予報はどこを見ても晴天。今年の雨の多さを考えれば、旅の神がもたらしてくれた恵としか思えない、そんな気持ちになります。そして期待も高まる。

まだ誰もいない駅前ロータリーを抜け、中へ入ろうとするとシャッターが降りており、その前に旅行者が何組か待ちをしていました。関東だとこの時間は始発はもう動いているので、ちょっとびっくり。

立山駅までの乗車券と特急券を購入し、5時18分の特急たてやま1号に乗車します。車両は元京阪3000系電車の、いわゆるテレビカーという特急型車両。1970年台に製造された、古い車両です。2両編成で到着、乗り込みます。
地鉄には古い西武線の特急車両であるレッドアローが走っているのですが、どうやらそちらはアルプスエキスプレスという観光列車で使っているそうで。西武沿線民としては、そちらに乗りたかった、ちょっと残念。

地方鉄道らしく、25mレールをガタガタ揺れながら快走していきます。朝の落ち着いた雰囲気の車両は、唸るモーターの音と流れる田園風景を望みながら、アルプスの山塊がだんだんと近づいてきて期待感を高まらせてくれます。

1時間ほど乗車し、アルペンルートの富山側玄関口である立山駅に到着。駅を降りると切符売り場があるのですが、すでに結構なきっぷ購入待ちの列が。どうやら始発電車が到着する前に車で立山駅まで来ていて並んでいるようで、ほぼすべての人が登山リュックを持っています。この先の室堂から、立山や剱岳に行く人たちでしょうか。
そこまで急いでいない我々は、せっかくなので立山砂防トロッコを見学しに行くことに。

起点の立山砂防ダム事務所と貨車置き場。ここから終点の水谷出張所までの18km高低差640mを1時間45分かけて登ります。平均速度10km/h程度!途中スイッチバックを42段もこなし、とくに樺平の18段連続スイッチバックは連続数世界一で他に類を見ないものなんだとか。
一般扱いはしていない工事用軌道で、たまに見学会を抽選でおこなっているようです。今年は何カ所も崩れて復旧が間に合わず見合わせているようですが。いつか乗ってみたい。


トロッコ展示レーンに置かれている過去使用の4tガソリン車。加藤製作所の5-Tg-5とう車両だそうで。運転席のレバー類がすごい!どうやって動かすのでしょうか。
そしてこの路線、規格が610mmという全国でも類を見ないほどの狭い幅を使用しています。一般的な在来線が狭軌と言い1067mm、新幹線などが標準機で1435mmという幅を使用しています。ナローゲージと言われる黒部峡谷鉄道のような762mmよりも狭い、本当に工事用と割り切っているところが素敵。

さて、そろそろチケットを購入してケーブルカーへ。このケーブルカー、時間指定の予約制。本来は7時00分と7時20分なのですが、臨時の10分発にぎりぎり乗れました。当日は平日なのに満員御礼、怒涛の人気っぷりですね。ぎゅうぎゅうで写真が撮れない・・・
立山ケーブルカーは1.3km高低差487mの距離を7分で結びます。写真では写っていないですが、ケーブルカーには珍しい、貨車がこの車両の手前に増設されていて、荷物を運搬するそうで。このさらに手前側に車掌が乗車する小さいトロッコのようなスペースも。

満員電車から解放されると、美女平に到着。今度は立山高原バスに乗車して室堂を目指します。ここも臨時便がバンバン。

7時25分出発。とにかく時間関係なく、ある程度の乗車率になったら走り出すだそうです。次のバスは待機しているし、後ろからもどんどん人が降りてきます。始発近い便なのにこの状態なのだから、何人が立山方面へ登山に行くのでしょうか。すごいなぁ。


このバスは23kmの距離を約50分かけて、九十九折れの道をぐんぐん登っていきます。
振り返れば美女平の台地が雄大に広がっています。さらに進むと、左側山塊の奥に剣岳が。見どころ多い路線ですね。

車窓に食いつきながらあっという間の50分をすぎると、大きな建物が見えてきます。これがホテル立山で、ここでバスは終点。
アルペンルートでよく目につく写真が、大きな雪の壁の中の道路にバスが走る写真でしょうか。雪の大谷というそうで、4月の道路解禁から6月前半ぐらいまで見れる道だそう。インバウンドで海外のお客さんも結構来るようで、とても有名ですね。

バスが到着した室堂は標高2450mと、アルペンルートの中では随一。下界では30℃以上の暑さでも、ここは15℃程度しかなく涼しいどころか寒い!
ホテル立山の中には売店と立山トンネルトロリーバスの乗車口があり、登山の基地らしく大きなカバンの人たちが思い思いに準備をしています。
せっかく来たのだから、表に出て景色を見て回りますか。


とにかく天気が良い、極楽浄土のようなロケーションの室堂平。立山もよく見えます。この道をまっすぐ行くと、どんな景色を拝めるのでしょうか。行きたい気持ちもありますが、今回はここで引き返し。
一枚目の写真で真正面が雄山、この下を立山のトロリーバスが通過しています。よくもまぁ、こんなところを…

トロリーバスの発券場まで戻ってきました。
今回のアルペンルート紀行、実を言うとこのトロリーバスに乗る事が真の目的となります。
少し前、2018年にもう一つのトロリーバスである関電トンネルトロリーバスが勇退、それ以降この立山トンネルトロリーバスが日本最後のトロリーバスとなっていました。それも今年2024年のシーズン終わりである11月30日を持って終了。日本からトロリーバスというものが消えてしまうわけです。

改札に並んでいると、乗車記念のカードがもらえます。そこにもラストランの文字が。思い出にとっておこう。
乗車時間まで改札前で待ち。狭いトンネルに人が紛れ込まぬよう、時間まで車両と対面することができません。


時間になりホームへ、最後のトロリーバスと対面です。


走行用の電力は、車両の後ろの集電装置から取ります。このことから、タイヤで走る「バス」と名の付くものですがれっきとした「電車」、正式には無軌条電車と呼ばれるもので、免許や営業法も鉄道が該当されます。
じっくりと観察したいものの、後ろから早く乗れよとぐいぐい圧が。もうちょっとお別れしたかったんですが…
8時55分、発車。

狭いトンネルの中をバスは走行します。途中トンネルが青い部分があり、これがかの有名な破砕帯。
自分の生まれるずいぶん前の映画ですが、黒部の太陽という、電力がひっ迫してるから黒部に発電ダムを造ろう!という有名な映画があり、何かの機会に見て感動し今でも大好きな映画なのですが、そこでも特にメインに据えられているのは破砕帯の話ですね。ここ立山トンネルではなくこの先の関電トンネルのほうですが。
何度来ても、グッとしてしまいます。

ロータリーをぐるりと回り、バスは10分程度で大観峰に到着。あっというまの到着。運転席の写真を撮らせてもらっていたら係員から、もう閉めますよ、と。
感慨にふける間もなくトロリーバスとはお別れ。今年はもう来れないでしょうから、もう海外に行くほか乗る機会がなくなってしまいます。さみしいですが、これも時代か。

ほぼ直結でロープウェーへ。もたもたしていたら外観を写真に収める暇もなく、9時10分、即出発。

富山側からすべての車両含めてぐんぐん登って行った高度を、大観峰からこの立山ロープウェーで一気に降下します。大観峰が2316mで終点の黒部平が1828m。7分で1.7km程度の距離ですが、高低差488mも一気に下ります。
このロープウェイの特徴は、ワンスパン方式だということ。途中に支柱が無く、起点から終点まで一本。途中で重さを分散しないのだから、どれだけ強い滑車を使ってるのでしょうか。そしてわざわざ不利なワンスパンタイプを使うということは…雪崩でしょうか。

あっという間に黒部平に到着。ここで大観峰と黒部ダムの中間ぐらい。駅がコンクリート打ちっぱなしの、まさに要塞というようなゴツさ。
改札を出ると、これからロープウェイに乗る人の長蛇の列。山登り装備が多いので、扇沢から立山を上りに来た人たちの列でしょうか。
立山駅以降、時刻表通りではなく臨時便ばかりに乗車してますが、それだけ人の乗りが多いということですね。平日だぞ…?

せっかくなので黒部平の周辺散策。この建物は屋上テラスに行くことができます。ここから見る後ろ姿の立山と、そのどてっぱらに開く大観峰の建物、雄大の一言で済ますにはもったいない。

前回来たときは紅葉のタイミングで、その時も、それはそれは素晴らしかったのですが。そればかりを望むのは、罰当たりというもの。これだけの晴天なのだから。最高の天気に来れてよかった。

黒部平からは、黒部ケーブルカーに乗車します。全線トンネル内で眺望は無し。やはりここも雪崩対策なのでしょう。
9時50分出発。

登ってくる対向車とすれ違い。お互いにたくさんの人が乗車してます。

無事黒部ケーブルカーの終点、黒部湖に到着。高々5分で500m近く降りてきましたが、外観が無いのでぴんと来ず。大観峰から考えても900m以上、一気に下ってきました。心なしかむわっとしているようなのは、トンネルのせいか高さのせいか。

おもてへ出るといきなり巨大な黒部ダムと、結構水量を湛えている黒部湖が視界に。このダムを造るため、何人もの人が汗水流して働いたのでしょうか。人のなす技のすごさよ。
写真には写っていませんが、横を見ると一隻の船が湖面を進んでいます。遊覧船ガルベという船ですが、こちらは老朽化のために今年で運行を終了するそう。もったいないですが、栄枯盛衰、仕方ないことかと。

ダムは下からも壮観。ここは何度来ても水しぶきで虹が出ていて、写真右側のテラスはレインボーテラスという展望デッキ。みんな思い思いに写真を撮ったり眺めています。
放水は観光用途で、大半の水はトンネルを迂回して黒4と呼ばれる発電所へ。
この谷筋の奥に黒部峡谷鉄道があり、その鉄道終点の欅台から先にある上部軌道、黒部専用線をたどる黒部宇奈月キャニオンルートツアーの予約数が拡大されるというのが耳に入り、死ぬまでに絶対行ってみたいルートだけに心躍らせていたのですが、今年頭の能登半島地震の落盤のせいで中止中。いつか必ず・・・!

さて、アルペンルートも後半戦。次は関電トンネルを走る電気バスに乗車です。トンネルの前身は先に紹介した黒部の太陽の舞台、ダム建造用工事トンネルですが、1964年に運行を開始したトロリーバスは2018年に終了、54年の歴史に幕を閉じてしまいました。整備のための部品が揃わなくなってきた、という話を聞いたことがあります。
その代わりに次シーズンから運行し始めたのが電気バス。

街で走っている路線バスと見た目は大きく違わないですね。免許区分的にも動力車操縦免許から大型2種のみで乗れるようになっています。

電気の力で走るという意味ではトロリーと大きくは違いません。供給される電力が架線かバッテリーかの違いだけで、モーターやインバーターの唸りなんかはただ車両の違いぐらい。ただ何か「味」のようなものが無いような気がしないでも…気のせいですね。
そういえば素人目にはバッテリーの定期的な交換のコストのほうがトロリーより高いような気がするんですがどうなんでしょうか。
11時00分、出発。

乗車時間的には15分ぐらいでしょうか。こちらも青の表示、破砕帯を通過しています。この壁の裏では今でも水がざぶざぶあふれ出ていると。ノスタルジーに浸る間もなくバスは一瞬でただのトンネルに戻ります。日常のあたりまえな事の裏にとても大変な思いが込められている、そんなことを思わせてくれる場所だと思います。

15分ってこんな短かったでしょうか。バスはトンネルから扇沢の谷に飛び出し、ロータリーで乗客をはきだします。前に来たときはこの上に鉄道のように架線がひかれていましたが、すっかり何もなくなってしまいました。

次の乗客を乗せるホームにバスはつくと、バス後方からパンタグラフが上昇、上部にある電力供給設備から電気をもらっています。なんだ、トロリーバスじゃん!なんてはしゃいでいました。

おみやげやら何やら見繕ってバス停に行くと、ちょうど信濃大町行きが発車するところ。あわてて切符を買い、飛び乗りました。11時25分バス発車。
ぐんぐんと高度を下げ、大町温泉郷を通り、30分程度で信濃大町の駅に到着。室堂では15度近かった気温も、もう秋に向かっているはずなのに夏が居座る最近の天候で30度以上、温度差にぐったりしてしまいます。それとも旅の終焉のぐったりでしょうか。
そんなこんなで今回の一泊二日アルペンルートの旅は、また先輩の車にぎゅうぎゅうで中央道を一直線、無事終了することができました。
アルペンルートは何度行っても何度も楽しめる、そして北アルプスの懐の深さに簡単に出会える、本当に素晴らしい観光地だと思います。また再訪することを目標に、また仕事がんばらにゃ。